人々の生活を便利で豊かにするために、世の中には多くの機械であふれています。家電製品や乗り物、医療機器などに欠かせない高精度の金属部品を作るのに、工作機械が使われているのをご存じでしょうか。工作機械は用途に合わせて多くの種類があり、それぞれ異なる特徴やメリットがあります。本記事では、工作機械の基礎知識と代表的な8種類の機械について解説しましょう。
1.工作機械とは？
工作機械は主に金属を研削や切削などを施して加工し、あらゆる機械の部品を作り上げます。スマートフォンなどの電子機器に組み込まれている精密部品や、自動車・飛行機などに使われる金属部品の多くは、工作機械によって作られるものです。
普段目にすることはあまりないものの、工作機械は私たちの生活に必要不可欠な機械や装置の部品加工を担う重要な設備です。機械を作るための機械として【マザーマシン】とも呼ばれています。
金属以外にも木材やガラスなどの加工にも使われるものの、日本工業規格（JIS）では工作機械を『主に金属の工作物に研削・切削などを施す』と、定義されています。
2.汎用工作機械とNC工作機械とは？
工作機械は主に汎用工作機械とNC工作機械に分けられます。それぞれどういった違いがあるのか見ていきましょう。
2-1.汎用工作機械
汎用工作機械は、ひとつの部品を作るのに作業者が、その都度操作を行う手動式です。操作には熟練した技術を必要とし、加工の精度も作業者の腕次第です。汎用工作機械は大量生産には向かないものの、単品の加工であればNC工作機械よりも、短時間で完成するというメリットがあります。
2-2.NC工作機械
プログラムを組み込むことで、自動で加工を行うのがNC工作機械です。加工に必要な作業工程・工具の順番などを、数値情報として認識させるため、正確な加工が行えます。大量生産に向いており、自動制御のため作業者の負担も軽減できます。
以前は制御システムにトランジスタなどを用いたものを「NC工作機械」と、コンピューターで制御するものを「CNC工作機械」と区別していました。しかし現在ではNC工作機械の多くに、コンピューターが使われているため、とくに区別されることはありません。
3.工作機械の基本的な加工方法とは
ここでは工作機械の主な3つの加工方法をご紹介します。
3‐1.研削加工
砥石を回転させ、金属素材の表面を削ってなめらかに仕上げるのが研削加工です。硬度が高く削りにくい金属も、研削加工なら問題ありません。
3‐2.切削加工
金属素材に刃物を当てて不要な部分を削り落とし、正確な形に切り出す加工をします。旋盤やフライス盤・マニシングセンサと呼ばれる工作機械が、これに該当するものです。
3‐3.特殊加工
切削・研削以外の加工が必要なときに、特殊加工を行います。電気や超音波などを使用し、より精密な加工が可能です。
4.工作機械の種類
工作機械はあらゆる加工を可能にするため、機械の種類が豊富です。ここでは代表的なものを解説しましょう。
4‐1.旋盤
金属素材を回転させながらバイトと呼ばれる刃を当て、円筒・円錐状に削る機械です。自動車・飛行機などの乗り物や家電製品、医療部品など身近にある機械の多くが旋盤による加工で、部品が作られています。バイトの種類や工程を変更することで、内径・外形加工やネジ加工、溝加工なども可能です。
4‐2.フライス盤
刃物を回転させて、金属素材を切削することで形を整えていきます。主に角ばった金属に使われ、平面・段差・溝・穴あけ加工などが可能です。旋盤も切削する機械であるものの、素材を回転させる方法と刃物を回転させる方法で違いがあります。
4‐3.マニシングセンタ
フライス盤にATCを搭載したものを、マニシングセンタと呼びます。ATCとは「Automatic Tool Changer」の略で、数種類の工具を自動で切り替えて加工できる装置のことです。フライス盤では工具の交換が手動だったものが、マニシングセンタではその手間がないため、より効率的で安全性も向上しています。
4‐4.複合加工機
ATCに加え、多種類の加工機能が備わっているのが複合加工機です。通常金属部品を完成させるには旋盤の後にフライス盤を使用するなど、複数の工作機械が必要となります。しかし複合加工機なら1台で複数の工程を進められるため、効率よく完成品を仕上げられるのです。
4-5.研削盤
研削盤は砥石が高速回転し、金属素材に押し当てることで表面を削って仕上げる機械です。加工がしにくい硬い金属も研削でき、高精度な加工を施せます。
4-6.ボール盤
穴あけ加工ができるボール盤は、金属素材をテーブルに固定してドリルを回転させて削ります。しっかりと固定されるためずれる心配がなく、正確な穴あけが可能です。旋盤・フライス盤の穴あけ加工よりも素早く作業でき、まさに穴あけに特化した工作機械といえるでしょう。
4-7.中ぐり盤
穴あけ加工を施した金属素材を設置し、さらに穴を大きく削る加工をするのが中ぐり盤です。ほかの工作機械ではできないような大きさの穴あけや、精度の高い穴あけが必要なときに使います。中ぐり加工のほか、ドリル加工・フライス加工にも対応します。
4-8.歯切り盤
さまざまな機械部品のなかで、動力のひとつとして不可欠なのが歯車です。歯切り盤は金属素材を切削することで、用途に合わせた多様な形の歯車を形成できる工作機械です。
5.まとめ
「マザーマシン」と呼ばれる工作機械はまさに機械を作る母体として、ものづくりに必要不可欠といえる存在といえるでしょう。私たちが快適で便利な生活を維持できるのも、工作機械が進化し続けるおかげといっても過言ではありません。
コンピューターによるプログラミングが主流になったことで効率化が進み、大量生産が実現しました。近年では人工知能を搭載した工作機械が登場するなど、より生産性や安全性の向上が図られています。工作機械はこれからも、さらなる発展を遂げるでしょう。
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